カーシェアリング
最近、コストがかかる自家用車を手放す人が増えてきています。車を持っていない方は、レンタカーを借りる人が多いと思います。レンタカーだと割高だし、借りたいときにすぐに借りられないで不便と感じる方も多いのではないでしょうか。近年、そのような消費者の要求に応える形で、カーシェアリングというサービスができました。
定義
カーシェアリング(carsharing)とは、一般に登録を行った会員間で特定の自動車を共同使用するサービスもしくははシステムのことです。自動車を借りるという面ではレンタカーと近い存在ですが、一般にレンタカーよりもごく短時間の利用を想定しており、利用者にとってはレンタカーよりも便利で安価になるように設定されていることが多いようです。
サービス概要
カーシェアリングはあらかじめ利用者として登録した会員に対してのみ自動車が貸し出されます。 利用時間の単位は10分から1日単位まで必ずしも一定しませんが、一般に、レンタカーよりも短時間の利用時間単位が設定されています。
普及状況
公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団による2014年1月の調査では、わが国のカーシェアリング車両ステーション数は7,568カ所(前年比34%増)、車両台数は12,373台(同40%増)、会員数は465,280人(同61%増)と、引き続き増加しています。
普及したきっかけ
ここ数年、ライフスタイルの変化により、若者の車に対する意識が変化してきました。
1990年代までは、若者の遊びは、車に乗ってスキーやキャンプに出かけることが流行でした。
近年は、車よりも、パソコンやスマートフォンにお金をかける人が増えてきました。
景気が悪化し、賃金が減少する一方、車自体の価格も高くなり、若者の車離れがますます進みました。
購入費もそうですが、増税も重なり固定費が高い車を、個人で維持することが難しくなってきています。
また、近年のエコブームもあり、エネルギーを無駄遣いしていると思われている車の位置づけが変化してきています。
ここ数年、個人や企業がモノ・時間などを効率的に貸したり交換したりする「シェアリングエコノミー」が広がりを見せています。
家賃の高い都内では「シェアハウス」という広いマンションを借りて、知人・友人と一緒に住むことがはやっています。
高いものをシェアしてコストを下げようというが「シェア」という考え方です。
その一つの方法として普及したのが車をシェアしてコストを抑える「カーシェアリング」です。
スイスで発祥
カーシェアリングの考え方や仕組みはもともとスイスが発祥といわれています。1970代のスイスで、都心で車がもてない住人が、郊外に共同で車を所有しはじめました。1970年代、大量の車両が都心に流入したことで、行政主導で大規模な車両流入規制を行いました。1987年、クルマが必要な住民らは都心では車が持てないため郊外に共同で車を持ち始めました。これがカーシェアリングの始まりといわれており、その後、この協同組合形式でクルマを共有する仕組がスイス全土に広まり、複数の組合が併存しながら会員を増やしていった結果、1997年には車両760台、会員1万7400人まで急増しました。
欧米に普及
スイスでカーシェアリングが普及・成長するのを追うように、ドイツやイギリスなど、ヨーロッパ各地でもカーシェアリングが広がり、やがて、自動車大国のアメリカや日本にも広まってきました。スイスでカーシェアリングが普及・成長するのを追うように、ドイツやイギリスなど、ヨーロッパ各地でもカーシェアリングが広がり、やがて、自動車大国のアメリカや日本にも広まってきました。
日本に普及
日本で初めてカーシェアリングを法人として営業したのは1988年に株式会社シーズです。 しかし、その後カーシェアリングは長らく普及せず、日本で本格的に事業化されたのは近年になってからです。
1999年から横浜市や京都市、東京都内の複数の自治体などで実証実験が行われました。
近年になってから、レンタカーを取り扱う業者、駐車場を事業とする業者などがカーシェアリング事業に参入し、シェアの獲得を図るべく活動している状況にあります。
レンタカーとカーシェアリングの違い
法的違い
レンタカーは、自動車を有料で貸し出す事業、または貸し出された自動車のことです。
日本に於けるレンタカー事業は、道路運送法第80条、同法施行規則第52条の規定、及び運輸支局長の定める「自家用自動車の有償貸渡しの許可基準」に基づく許可を受け、営業を行っています。
日本の現行法令上は、「自動車の利用の対価として金銭を支払う」場合はレンタカーと同様の扱いとされています。
すなわち、法的にはレンタカーもカーシェアリングも同じとされています。
サービスの違い
レンタカーは不特定多数が利用するシステムですが、カーシェアリングはあらかじめ利用者として登録した会員に対してのみ自動車が貸し出されます。 利用時間の単位は10分から1日単位まで必ずしも一定していませんが、一般に、レンタカーよりも短時間(短期間)の利用時間単位が設定されています。
利用料金の違い
一般に、短時間で比較した場合はレンタカーより割安となり、半日・一日という単位ではレンタカーのほうが割安となるように設定されています。ただし、カーシェアリングでも、6時間・半日・1日などを単位として割安なパック料金が用意されている場合もあり、経済性は会員プラン・料金プランごとに比較を行う必要があります。
カーシェアリング会社
タイムズカープラス(タイムズ24)
2015年時点でカーシェアリング市場の過半数を占める最大手。基本的にタイムズ駐車場にステーションが置かれ、全国の各主要都市でサービスを展開している。長らく少ない車種で展開してきたが、商用車や外車なども積極的に導入してきている。
オリックスカーシェア(オリックス自動車)
2002年にサービスを開始した業界古参。フィット、ティーダラティオ、インサイト、i-MiEVなどエコカーを中心に展開。2009年12月にはファミリーマートとカーシェアリングサービスの業務提携を結んだ。全ての車両にITS技術を利用したカーシェアリングユニットを搭載している。2012年4月に利用規約が変更され、個人会員向けに月会費が無料(但し時間料金が割高)の料金プランが設けられた。
careco【カレコ・カーシェアリング・クラブ】(カーシェアリング・ジャパン)
三井物産グループ。首都圏の都心部に集中して展開している。他社に比べ車種が豊富であり、プリウス・インサイトなどのエコカーから、フリード・ヴォクシー・ウィッシュなどの7、8人乗り車両も利用できる。
料金体系
料金は、概ね以下の構成が採用されています。
初期費用
入会金やカード発行費という名目で、入会時に一時的に支払います。キャンペーン等で無料になることもあります。
固定費
おおむね毎月の基本料金として定期的に徴収されます。会社によっては、この固定費と利用料金が相殺されることもあります。
時間料金
15分や30分単位で課金される、利用料金の基本となります。
距離料金
ガソリン代の利用者負担を担保するため、走行距離に応じてガソリン代相当の料金を時間料金とは別に徴収していることがあります。
距離料金自体の設定がなかったり、固定料金パックの場合のみに距離料金が課金されるパターンもあります。
固定パック料金
レンタカーのように、6時間いくら、といった定額料金プランが用意されていることがあります。
利点と欠点
利点
節約できる
利用者にとってのメリットのひとつは自動車を使用する費用が安く済むことです。自動車を自己所有する場合、取得価格が高額である上、自動車取得税、自動車税または軽自動車税、自動車重量税、駐車場代、自賠責保険代、自動車保険代、車検代、整備費用、そしてそれぞれの消費税など、特に日本においては、所有するだけで相当の固定費が所有者にのしかかってきます。このような諸費用を払いつつ自動車を所有したとしても、「車社会」の地域に在住している場合を除けば実際に使用するのはせいぜい1日数時間程度にとどまり、稼働率が低い状況となります。
カーシェアリングを利用すれば、車の固定費を節約することができます。
借りやすい
レンタカーと比べると、受付で説明を受けたりする必要がないので、わずらわしさがなく、借りやすいです。
欠点
清潔でない
レンタカーと比べると、きれいに維持管理されているとは言えません。前のユーザーが汚い使い方をした場合は、汚い状態で使うこともあります。ネット上では、ゴミが落ちてたり、空き缶が後部座席に転がっていたこともあるという情報も見られます。
喫煙不可
カーシェアリングは全車「禁煙」なので、喫煙しながら運転したい人には向いていません。
ペット不可?
タイムズカープラスの場合、以下のような記述があります。
タイムズカープラス車両はペットをケージに入れていただきご同乗いただくルールとしておりますが、当該ルールをお守りいただけない会員様が見受けられ、結果として緊急にペットの毛を清掃するために車両のご予約受付を停止するなど、他の会員様にご迷惑をおかけする事態が発生しております。
併せて、動物アレルギーの方への配慮の観点からも、やむを得ずペットの同乗を禁止とさせていただくこととなりました。
所有感がない
大手のカーシェアリング会社では、提供される車は大衆車・コンパクトカーに限られています。日本の現行法令上は、「自動車の利用の対価として金銭を支払う」場合はレンタカーと同様の扱いとされ、カーシェアリングで使用される車両はレンタカーに用いられるものと同様、「わ(れ)」ナンバーとなります。車種を選ぶことができないので、車種にこだわりを持つ人には向いていません。また、車を買うこと、持つことを一種のステータスと考える人にとっては、所有感が得られないカーシェアリングは向いていません。
維持費の違い
車を所有する場合とカーシェアリングを利用する場合の費用を比較してみます。A氏は都内都市部在住のサラリーマンです。家族構成は、妻、子供の3人です。コンパクトカーを1台所有しています。賃貸住宅に住んでいて、駐車場は月極駐車場を借りています。通勤は電車なのと、妻は運転をしないので、平日は全く車に乗りません。平均すると稼働日数は月に8日です。
車所有の場合の維持費
以下に、車所有の場合の年間維持費を示します。
項目 | 金額 | 条件 |
---|---|---|
自動車税 | \34,500 | 1.5L以下 |
駐車場代 | \120,000 | 月額1万円 |
任意保険 | \60,000 | 10等級、車両保険あり、ゴールド |
車検・点検費用 | \100,000 | 車検費用12万円(2年)、その他費用8万円 |
燃料代 | \24,000 | 年間3千km、燃費15km/l、120円/l |
年間維持費 | \338,500 |
コンパクトカーでこの金額になります。普通車になると、50万円程度はかかるはずです。A氏は車をローンではなく、現金で購入しています。ローンで購入した場合、それだけ費用は加算されてしまいます。
カーシェアリングの場合の維持費
以下の条件で比較します。
利用頻度:月8回、1日平均3時間、年間3千km走行
車両タイプ:コンパクトカー
項目 | 金額 | 条件 |
---|---|---|
自動車税 | \0 | |
駐車場代 | \0 | 月額1万円 |
任意保険 | \0 | |
車検・点検費用 | \0 | |
燃料代 | \0 | |
年間維持費 | \120,000 | (月額基本料+利用料金+距離料金)x12の概算 |
なんと、年間20万円以上の節約です。これだけあれば、毎年、家族で旅行に行けますね。